◎誕生日 お迎えまだか 耳澄ます
にしても、気がつけば73歳の今日、長生きしたものよと呆れるしかない。
つい愚痴も出る。自信満々でヘビースモーカーを謳歌していた頃、ガンとたばこの因果関係はあるはずもないと豪語してもいた。確かに、昨年、72歳までにお迎えが来ていれば、肺がんとは気付かず、そのまま逝けたわけで、ねぇ。長生きの功罪ってとこ、か。
特にやりたいこともなし、特にやらなければならないこともなし、ただ、寝て起きて、食って寝て、息している。ただ、それだけなのに、やたら草臥れる。脳細胞はほとんど消滅、お肉の細胞劣化も甚だしい。小便垂れ流しも視野に入ってきている。息は吸って吐いているが、そのリズムが乱れることが多い。気温の変化に大きく影響され、時に激しく咳き込んだりすると、なかなか止まらない。呼吸が苦しくなる。生きている証で、苦しく辛い。
週一程度の洗濯も億劫になっている。ベランダで干し終わると、何かひと仕事終えた感を強く感じることも増えた。達成感ではなく、疲労感、息も上がる。炊事、洗濯、掃除の三大家事のうち、掃除はしなくても死ぬことはないだろうと早々にやめ、炊事は気まぐれに時たまだが、洗濯だけは「ねばならない」のだが・・・。
がん宣告されてから、舞茸でしじみ汁にしたり、豆腐と一緒にしたり、電子レンジでソテーにしたりして、朝食をとり始めたのだが、先日肺がんドックの検査結果を見てからは、もう朝食をとる気も失せ、いまは飲むヨーグルトだけにしている。それだけでなく、あれが食いたい、これが食いたいといったものがなくなり、一汁一菜というか、そんな食事で満足している。何を食おうか、食いたいものもない。考えるのも面倒になっている。
気になるのは、脱炭水化物をテーマに昨夏から始めたダイエット。なかなか効果が見られなかったのに、最近では銭湯のデジタル体重計に乗ると、何と65kg台。昨夏より8kgの減だ。70kgを当初、目標にしていたのだが、10月に70kgを切ったら、あとは一気だった。これがダイエット効果なのか、肺がんの影響なのか判断し難いのだが、銭湯の大鏡に映した裸体を見れば、あぁっ、上半身のお肉がげっそり落ちている。琴奨菊の真似して仰け反ってみると、あばらがくっきり浮き出てくる。
何とも、馬鹿々々しい、詮無きことを繰り返しつつ、ひたすらお迎えの足音に耳をそばだてているのだが・・・。