2015/10/07

◎目を閉じて 俎板の鯉 跳ねもせず

にしても、肺のCD画像一枚持たされ放り出された先は東京労災病院、9年前銭湯で倒れ救急車で運ばれクモ膜下出血の手術を受け、この世に無事生還した病院だけに、心情的には近しい。今度も、生きるか死ぬか、前回との大きな違いは、今度は自転車、自分の足で駆け込んでいる点だ。診察券は手提げ金庫に残っていた。
受付が終わると、とりあえずの検査、血圧測定、血液検査、尿検査、心電図、肺気量、胸部レントゲン撮影・・・、呼吸器科の担当医の診察はそれから。CD画像を見ながら、エネルギッシュな医者は躊躇う事なく、ポンポンとリズム良く懇切丁寧に説明した。
「大きな病気を考えなきゃいけない。左の肺のこの辺に4センチ強の塊、おむすび型の全部、声が涸れるのは反回神経の麻痺、左の神経が引っかかってる」
「まずは、癌かどうかを確定しなきゃいけない。今も昔も、癌細胞があるかどうかは、内視鏡検査で取ってくる。で、それを顕微鏡で見る。一番いいのは手術なんですね。他に転移がなければ、できるかもしれない。転移しているかどうかが分かるPET検査、四谷三丁目のクリニックでやっているので・・・。
もう一つは、放射線、抗がん剤・・・。どれも大変な治療なので、やるからにはちゃんとした根拠が欲しい、出来れば、癌細胞を証明したい、これだけ大きいのがあったら、癌以外考えにくいんですけど・・・」
「何もしないという選択肢・・・ありますねぇ。ほっとけば進行する。声がれ、血痰、痛み、出血、あれこれ出てくるでしょう、ね」
「肺がんは手術が最善の策。右にも出てきちゃうと窒息もある。早い方がいいかな、と思う。もう癌であることは間違いないので、内視鏡検査とかは飛ばしてでも・・・」
午後には頭部のCTスキャン・造影検査を予約、PET検査の手配もして「いまは頭が真っ白だと思うんですが、どうするか暫く考えていただいて、次の診察は9日に入れておきます」と事務的にテキパキ進めた。

☆肺の影 切ってダメなら どないしよう
「PET」とは「陽電子放射断層撮影」との意、PET検査は、がんを検査する方法の一つで最近保険診療が可能になったという。がん細胞が正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖を取り込む性質を利用、ブドウ糖に近い成分(放射性物質)を体内に注入し、しばらくしてから(約1時間)全身をPETで撮影するとブドウ糖が多く集まるところがわかるという。クリニックには新橋で地下鉄銀座線に乗り換えるコースで行った。新橋駅での乗り換え、こんなに遠かったっけ。ラッシュは終った時間帯なのに、人いきれが息苦しい。行き交う人の波がエネルギッシュで、弾き飛ばされそうだ。
PET撮影は、2時間余りで終わった。その結果は、労災病院に送付されるとかで、検査料金の他に500円の送料を払わされた。
で、今はもう、俎板の鯉・・・。真っ白になった頭で考えてみても、特にというか、別にやること、やりたいこともないわけで、この際、手術を受けてみようかという気が仄かに湧き上がってきた、よ。ウフッ。