2006/11/21

◆リアリティの質も時代によって変化する?


にしても、ビデオで映画を見て久々に癒された。チャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」(1974年製作)で、映画館で見たような記憶もあったが、新鮮で、面白い、楽しめる人間ドラマだった。
主人公はニューヨークの会社員。ある日、電話が入り、妻と娘が病院に運び込まれたという。病院へ駆けつけた時には妻は死亡、妻が何者かに襲われた挙げ句に殺され、娘も暴行されたことを聞かされて憤り、悲しみに打ちひしがれる。そんな時、ひょんなことから銃を手に入れ、彼はその銃を密かに携え、公園で襲いかかってきたチンピラを射殺。これをきっかけに沈鬱な状態が吹っ切れ、以来、次々とチンピラたちを仕留めていく・・・。
何より、ストーリー展開にリアリティを感じ、何とも懐かしく、近ごろの映画と違い旧き良き時代の映画らしい映画で、嬉しくなった。
例えば、ダイ・ハードでのブルース・ウィリスのように目茶目茶タフなスーパーマンではなく、といってダ・ヴィンチ・コードのように難解ではなく、まさにカメが好きな浅田次郎作品の読後感に似ている。
近ごろの映画は、もう旧来のエンターティメントのネタが出尽くしたのか、奇想天外な作品を狙いすぎているようだ。それもSFX技術などの進歩によって可能になっている。
が、カメはそれら全てにリアリティを感じられない。文字通りの絵空事、バアーチャル世界であって、人間臭さを感じられないのだ。これは、エンターティメントに対する嗜好による差もあるだろうが・・・、なるほど70年代の映画は確かにリアリティがあった。
もっとも、リアリティも時代によって変容するものなのかもしれない。カメのセンスは70年代なのかもしれないと思う。
このリアリティは浅田次郎の作品群ではしっかりと継承されているが、その作品が映画化されるとそれは喪失してしまう。ま、映画なんてそんなものといえば、それまでだが・・・。
多分、いまはバーチャルの世界が本流となり、リアリティは過去の遺物になっているようだ。そう考えると、近ごろの殺伐とした世相も、おためごかしの連鎖も、なんとなくその構図が見えてくる気がする。