◎ 真っ白な 頭に浮かぶ 肺がん死
にしても、あれ以来、頭は真っ白なままだ。人の生き死にについては、昔からあれこれ自己流で考察を重ね、危機管理の備えも万全を期しているつもりだった。でも、イザとなると何も思い浮かばず、思考回路はストップ、性急に結果が欲しくなり、自暴自棄になりかねない。
あれって、前回報告したCT頚部造影の撮影、画像を見ながら耳鼻咽喉科の医師は「肺の中に異変あり。でも、専門分野が違うので・・・。丁度今夜、医大から肺が専門の内科の先生がこちらに来るので、引き継いでおきますので、今夜また来てください。その方が話が早い」。タライ回しやないかと不貞腐れながらも、従わざるを得ないのが情けない。その夜、肺が専門の内科医は画像を眺めながら、こう見立てた。「声が出ないってことで来られたと思うんですが、やはり、肺に影があります。肺がんの疑い、ですね。放射線治療はこの病院ではできない。東京労災病院か。治療して治らないこともありますし・・・。声帯の神経はここに繋がってます・・・」
肺がんの疑いという言葉が脳裏を駆け巡る。疑いって何なんだ!!! 放射線治療って? 訳が分からない。疑いって言いながら、放射線治療って、どういうことなのか。真意を分かってもらえるかどうか、不安ながらも無我夢中で掠れた声で言った。「放っといても大丈夫なんですか・・・」と。
内科医はカメの心中を見透かしたように「何もしないという、その選択肢もあります。紹介状を書きますから、治療してもよし、相談してもよし・・・」と淡々と言った。受け取った紹介状は診療情報提供書とあり、CD-ROM在中ともあった。
茫然自失ってやつか。事態を認識できない。ボーっとして脳が働こうとしない。ただ、何も考えたくない。顔を前に向けたくない。俯いたままだ。何をどうすれば・・・。あれこれ考えていたはずなのに、頭は真っ白のままだ。
NETニュースに「川島なお美さん、抗がん剤治療拒否 最後まで女優としての人生全う」とある。
NKKでは、SONGSスペシャル「矢沢永吉」を流していた。ライブに密着したドキュメンタリーだ。インタビューに矢沢の声が耳に入ってくる。「やればいいじゃん。ドキドキ、ワクワク、声が出て、足腰動いているうちは・・・」
一枚の同じ画像を巡って、医者の言葉は何とも歯切れが悪い。素人のカメに何が見えるというのか。結局、医者は患者にボールを投げ返して責任回避、自己責任で決めろ!ということや。でも、この歳や、医者の言葉にも、何もしないことも選択肢になる、と。ウンウン、そう、自己責任ってやつ、や。瞬間的に浮かんだのは川崎の回春デリヘル。あぁー、あぁー、アァー。
目が冴えて冴えて、眠くならないんだよなあ、夜も麦爽快缶を開けてはみたが・・・。Gも無理。脳がまったく反応しない。いま、00:06、参った、ねぇ。