2011/10/26

◎ 死にたいというより、むしろ生きていたくない


にしても、凡愚の身は懲りもせず、NHKのハイビジョン特集「早過ぎたひと 世紀の伊達(だて)男 加藤和彦」なるドキュメンタリー番組を視聴してわが身の不明を恥じるばかり、ほぼ同時代の空気を吸ってきて、いまだに無駄に息をしているだけのカメより4歳も若い加藤は功成り名遂げ自死を決断、実践したわけで、加藤については「帰って来たヨッパライ」ぐらいしか知らないカメは番組で不出生のマルチ・ミュージシャンとしての輝かしい功績と強烈な美学に貫かれた生き様を見せられただもうひれ伏す思い、公開された遺書
には「死にたいというより、むしろ生きていたくない」なんてカメの思いそのままに、そして、淡々と実行してしまう潔さ、エッセイの中では「ワイルドは好きなことをする。エレガントはこだわり?」なんて分析して見せて、自らは生涯エレガントを貫いたわけで、浮世の淀みを、それにも気付くことなく、加藤流にいえばワイルドに、気侭に好き勝手に生きてきたつもりのカメにいわせれば「大変だったんだろうなぁ」と感嘆するしかなく、でも、加藤はそんなことはいとも易々と何事もなかったかのようにこなしてみせ、 世紀の伊達男を演じ切ってしまったんだもんねぇ、人生色々、人さまざまはわかるし、確かにその通りなのだが、長生きの厄介なところは、いったん幕を降ろしたつもりなのに、その幕が降りきらずに下の方が少し開いていて、本来なら見なくても良い、見ることも出来なかったはずの舞台がそこここに見えてしまい、心をいささか乱されても如何とも出来ず、加藤和彦の生き様死に様はカメにとってみればまさに理想形で、単純にやっかむしかないのだが、さて、はて・・・。