◎チェンマイの味は濃く、癖になる
にしても、チェンマイには味がある。チェンマイの味は、辛ければいいバンコクとはひと味もふた味も違って、徹底的に濃い味で癖になること受け合い、カメ的には気に入った。
最も象徴的なのが、チェンマイソーセージ、口に入れて噛んだ瞬間の得もいわれぬ味は恍惚としてくる。甘いとか、辛いとかの味ではなく、そこには生命の根源を全て凝縮してしまったような、何か自分自身のお肉をミンチにして詰め込んだような味とでもいえばいいのか、いわば共食いか。
屋台などでは定番のようで、1本切ってもらい、ビールでも飲みながら、楊枝に差して食うと、それだけで腹いっぱいになる。
ある時、タイ食堂で、写真付きのメニューを見ながら、チェンマイらしいアーハン(料理)と聞いてみたら、Massaman Curry with Chickenときた。何のことやら、さっぱりなのだが、出てきた料理はイメージ的にはレッドカレーか、イエローカレー。ちょっと辛い口当たり。サツマイモみたいな芋が角切りでゴロゴロ入っている。それも、半生状態か。他の料理でもそうだが、ここでは、どうやら野菜、根菜類は煮込むことはなく、茹でるというより、熱湯を潜らすというか、生に近い状態で食うようだ。
次いで、カイソーイ(カレーラーメン)。チェンマイ名物として知られているが、ビルマがその起源であるとも。とにかく旨い。何ともいえず、何を食っているのかわからない。日本でいうキシメン風の食感で、スープはこってりしている、とでもいえばいいのか。摩訶不思議なそんな雰囲気もいい。見た目がそのまま味につながらない。実は、チェンマイソーセージの味がした。行き着くところは一緒なのか。 日本食のそんな繊細さはない。というより、そんなもの求めていない。
チェンマイでまだ間もないころ、昼食でタイ食堂に入る際、店頭で調理していた親父にちょうど先客に出した2皿の料理と同じものを注文した。先客は2人で、ビールを飲みながらの昼食打ち合わせといったところ。で、出てきたのは、トリのチャーシュー盛りとポーク焼き盛り、それにライスとスープ(105BT)。その量の多いことといったらない。でも、旨かった。これは、多分チェンマイ風の味付けだろう。 ひと言でいって、味がやたら濃いい。バンコクと違って、辛みはあまり追求していないよう。この味が白飯に付いたのが、また、絶妙の旨さ。これは、日本の白飯では出来ない技だ。食文化はやはり主食によって、導き出されるような気がした。