2010/10/29

◎国民の90%が「中流意識」を持てたんだから・・・


にしても、先ごろ、衰退途上国という言葉を目にしてハタと膝を叩き、ぼんやりと脳を覆っていたこの65年間の闇は濡れ紙をゆっくり剥がすように晴れていった。
衰退途上国の出所はどうやら欧米で、正確には「NDC」(Newly Declining Country=新しい衰退途上国)といい、日本を揶揄して使われるそうだ。では、衰退に移行する前の絶頂期は何時だったのかといえば、まさにカメの人生模様と軌を一にする・・・なんて、いま悦に入ってみても、当時のカメはノー天気に「サラリーマンは、気楽な稼業と来たもんだ ! 」と浮かれつつ転職を重ねながらも中流意識にはどっぷり浸かっていたような気がする。その生活実態は「ウサギ小屋」とも揶揄されるような粗悪なものなのだが、それでも、カラーテレビはある、冷蔵庫はある、エアコンはある、洗濯機はある、と世間一般に普及している家電製品は揃っていて、それが「世間並み」の暮らしと納得し、もうこれ以上欲しい物はないよなぁと飽食感さえ覚えていたのだが・・・。
これは、日本が高度経済成長を成し遂げ、安定、成熟期に入った昭和の後半のことで、内閣府の「国民生活に関する世論調査」で国民の何と90%が『中流』と答えた時期だ。で、昭和54年の「国民生活白書」では、国民の中流意識が定着したと、それを評価してみせたほどだ。カメなどは無思想、無批判に「官僚国家」だからこその快挙と喝采したものだ。同時に、生活実態はともあれ、国民の90%が中流意識を持てる社会なんて、この地球の歴史からみても人類がいまだかつて体験したことのないユートピアに違いないとも思った。多分、欧米諸国も共産圏諸国も、そうした共通意識を持てる国家を目指しているのだろうが、敗戦をバネに安保の傘の元、企業戦士といわれながらもガムシャラに追い付き、追い越せで、気がついたら日本の国民総生産 (GNP) は米に次ぐ世界第2位になっていて、その上、国民の90%が「中流」意識をもてるまでになれば、これ以上の幸せはないだろう。ただ、そんな状態を長く続けることは難しく、生態系システム、法則に則って衰退期を迎えるのは当たり前、必然の結果だ。それも、平和呆けという言葉に象徴されるように、難しいことは考えず、ただひたすら働き続けて、そこまで達成してしまった日本だから、これからは坂道を転がり落ちるだけだよなぁ、とカメなどは悦に入っていたものだ。
そして、バブルの時はみんなで狂乱し、株を買い、アメリカの土地まで買いまくり、お立ち台で踊りまくるのが日本人で、みんな、そんな空気を読んで訳もわからずはしゃいで、その後は「空白の10年」が「20年」になり、政権の座が民主党に移ってからは、日本の衰退ピッチに拍車がかかり、転落の様がリアルタイムに見せつけられるようになった、と思う。あぁ、どうにもならない衰退途上国ヨ・・・。