2010/08/19

◎特異なケースに見えても、実は普遍的な事象・・・


にしても、ニュースの価値観も随分と変化してきているようだ。かつては、その構成要素の一つに異常とか特異なケースがあり、普遍的な事象はニュースにならなかったのだが、近頃では、その辺りのバリアが低く、というより、なくなってしまったのではないかと思うことが多い。更にいえば、ニュースを伝えるメディアの目をはじめとして、世間一般の目も曇ってきているのではないか。その上、目の前に展開する事象に目を奪われ、みんなで慌てふためき、ニュースには何より必要で重要な洞察力に乏しい、というより、それに欠けるのだ。特異なケースとして報じられ、そんな馬鹿なことがとこれまでは驚いていたのに、実は、それが決して特異なのではなく、当たり前という事象が相次いで起こっている。特に、家族の問題でそれは顕著だ。
つい先日、生きていれば都内の男性最高齢となる111歳の男性が7月下旬、東京・足立区の自宅でミイラ化した遺体で発見され、ちょっとした真夏のミステリー騒ぎとなった。その後の調べで、その男性は、約30年前に「即身成仏する」と言い残してこの世を去ったそうで、約2年後に部屋をのぞいた家族は男性の死亡を確認していたにもかかわらず、放置したまま同居を続けていたという。俄かには信じ難い話で、こうした異様な家族関係や年金の不正受給といった疑惑まで浮上して、“現代の怪談”話となったのだが・・・。
これまでなら、こんな不思議な話もあるんだと、そのミステリーの謎解きに首を捻っていたのだろうが、今回は違った。ひょっとして、ひょっとして・・・と、他の自治体でも高齢者の行方を確認し始めたら、杉並区では113歳になる女性が数10年前から行方不明になっていたり、長野県や名古屋市でも長期にわたり行方不明の高齢者が問題になっていて、なんだかんだと、100歳以上の行方不明者は、これまでに明らかになっただけでもすでに全国で100人近くになって、海外のメディアからは長寿大国・日本は「嘘つき」とおちょくられたりもした。
そこで、なんとも納得し難いのは、住民登録などを残したまま家族の行方が分からなくなって何年も何十年もたつのに、残っている家族が何もしていないことだ。中には警察に行方不明として届けていたりもあるが、それは圧倒的に少数派だ。また、年金・医療を管轄する行政も、何ら問題にせず、生きているのか、死んでいるのか、まったく無関心のまま、無為に時間だけが経過 している。家族とは一体、何なのか。
16日には、プロ野球福岡ソフトバンクの王貞治・球団会長の母、王登美(おう・とみ)さんが肺炎のため死去。108歳だったという。まさに、古き良き時代の家族を象徴するニュースだろう、ほのぼのとして、羨ましくなるのだが、いまや、こちらの方が特異、稀有なケースで、ニュースの構成要素をいくつも備えているのに、メディアの扱い方を見ていると、まるで腫れ物に触るようで滑稽だ。