◇息を吹き返してあたふたしてしまうよなぁ
にしても、生死の境を彷徨うような手術といわれ、ならば、そんな大手術から生還したのなら、神の啓示を受けたとか・・・それくらいのことはあって、その「前」と「後」とでは何かが変った、変わらなければならないとも思い込んでいたようだ。何も変わる必要はないし、そもそも手術(麻酔)そのものを覚えていないのに・・・と、いま首をひねりつつ、反省を重ねている。
歳を重ねてからの体験は人さまざまだし、それも色々あって、愉快で、楽しく、快感が湧いてくるような体験ばかりではない。できれば体験したくない、遭遇したくない、忘れたままでいたいものも少なくない。
三途の川の渡し場から戻るなんて、その際たるものではないか。いっそ一気に渡ってもらいたかった、と実は瞬間思ったが、当然、口には出来なかった。倫理観がまだ微かに生きていたわけだ。
いまもそうだが、その『前』も、国家ニートのカメにはやらなければならないことはないし、いまさらやりたいこともないし、やり残したこともないし・・・、で、身辺整理は着々と進めていたし・・・、そう、何か食いたいもの、飲んでみたいものもないし、見たいものもないし、行きたい所もないし・・・。
振り返ってみれば、できたら世間の風、世間の空気から一刻も早く遮断され、息を止めて楽になりたいと日々過ごしていた気がする。
それが、あれよあれよという間に、息を吹き返してしまったのだから・・・、あたふたしてしまうよなぁ。