◎加藤和彦さん、格好いい奴は死ぬ時も格好いい
にしても、格好いい奴は死ぬときも格好いい・・・と思った。
「もうやりたいことがなくなった」と親しい友人らに言い残し、長野県軽井沢町のホ テルで首をつって死亡しているのが見つかった加藤和彦さん、62歳。まさに、デビュー歌「帰って来たヨッパライ」の通り「おらは死んじまっただ」「天国に行っただ」 「ワーワーワッワー」と早回しのテープ声で歌い「雲の階段を おらは登っただ・・・」と別れを告げているようだ。
「帰って来たヨッパライ」がリリースされたのは1967年(昭和42年)の12月25日、カメが広告代理店に入社して2年目のクリスマス。社会の右も左もわからず、右往左往しながらも、退社後は久保田宣伝研究所(現・宣伝会議)のコピーライター養成講座(7ヵ月で終了)に通っていた頃だ。突如現れ、あっという間に一世を風靡した京都の若い3人組は何とも格好良く、それだけにカメは理不尽な嫉妬心を抱き、嫌いになっていった。もっとも、歌は好きで、時には口ずさんでもいたのだが、3人の動向は時々ニュースなどでウオッチはしていた。さすがに3人とも才能豊かで、他の芸能人たちとは違って、自立していて、自己主張できるアーティストとしてそれぞれに確固とした地位を築いて行くさまは、さすがに凄く、カメなぞはその都度、羨望の眼差しを注ぎ、自らの浅学菲才、無為徒食を棚に上げ、おだを上げるしかなかったのだが・・・。
6年前に還暦を迎えてからは、浅学菲才、無為徒食に怠惰無策を加え、さらに、文字通り、小人閑居して不全を為す日々の恥ずかしさから、1日も早く「雲の階段を登る」欲求に苛まれることもあるが、簡潔にいってしまえば「死ねないんだよなぁ」で一件落着、「これでいいのだ!!!」なんていってみて・・・。
加藤和彦さんの今回の死に様をニュースを通じてみてみると、やはり「孤独」がキーワードになっているようだが、この「孤独」という言葉、外道の世界には存在しない。真っ当な加藤さんは「もうやりたいことがなくなった」というのが本当のところだろう。で、その想いを自らの手で実践してしまう、実践できる決意の固さは立派で、頭が下がった。