2009/11/16

◎カメの自画像は、絵に描いた死言状



にしても、ちらっと下見は「断末魔」の一言だった。直ぐに丸めて、その場でじっくり見ることはしなかったが、冥途へのいい土産にはなるだろうと思った。
15日夜のサンデーマーケットで 似顔絵を描いてもらった。お値段は150BT(450円)、時間は20分足らず。ゲストハウスに戻って、恐る恐る広げてみたら、UPした写真の通りで、さすが、手慣れたもの。特徴をよく捉えている。特に、近頃気になっている上下顎の衰え、66歳まで生きてしまった老醜である。
サンデーマーケットは毎週日曜日の夕方から、旧市街地のターペー門の西側(お堀の内側)の通りを中心に歩行者天国にして、露店が道の両側と中央に所狭しと並ぶ。衣類、小物、工芸品、絵、アクセサリー、おもちゃ、楽器、食べ物、フットマッサージなど様々なお店があり、盛況だ。
薄暗くなってからゲストハウスを出て、道なりに南下したら、予想通りサンデーマーケットに遭遇した。活気づいていて、ワクワク感が芽生える。デジカメ片手にウロウロしていたら、通りの中央に縦一列になって10人ほどの画学生上がりとおぼしき絵描きが座り込んで似顔絵、デッサンの営業中だった。実は、これまでにも、別の場所でこうした場面には出くわしていて、一度描いて欲しいとは思っていたのだが、いずれもお客さんがゼロ、価格も不明とあって、怖じ気付いていたのだが、昨夜は、何とちびっ子から若い女性、欧米人まで、小さなイスに座ってじっとしていて、よくよく見ると、画家の足下には「150BT 20min」とあって、手漉きの絵描きは1人しか残っていない。細面で丸坊主、鼻と顎に髭を少々・・・で、ま、いいかと腰を下ろしたら、さらさらと、さすがに手が早い。つい、のぞきたくなって、画家の目を見たら、眼光鋭く、左手を左に振り払い、あっちを見てろといわんばかり。なかなか、迫力があった。その指示の通り、じっと我慢、我慢。これが結構きつい。通行のお客さんはのぞいていくし、特に仕上げが近くなると、たむろして眺める。出来れば、感嘆詞が欲しかったが、黙っているのがマナーなのだろう。
で、何より、入れ歯の噛み合わせが悪いままに、さらに緊張して、噛みしめるものだから、もっと酷いよなぁと危惧しつつも、いわば自画像を描いてもらいたくなった心境といえば、やぱり、何か、そうすることで、何となくだが、死期が間近に迫ってきているとか、或いは、死期を早めるというか、死期を呼び込めるのではないかといった密かな期待が強い。写真と違い、手で描いた画像には、そんな霊力みたいなものが宿るような気がする。
何せ、66歳まで生きてしまって、いつ逝ってもいい、というより、早く逝きたいけれど、まだ逝けていない状態がいまも続いているのである。息をしているだけに、煩悩といっても、若き絵描きに炙り出されたら、それこそ死ぬほど恥ずかしいと思いつつも、それならそれで、それもいいか、とまさに絵に描いた死言状になった気がした。